モヤモヤを通り越すレベル!和歌山県学力到達度調査
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和歌山県では小学4,5年生、中学1,2年生を対象に県独自の学力テスト(学習到達度調査)を実施しています。実施後1か月半ほどで分析資料がアップされるので、小学校について傾向を見ているのですが、従来から出題としてはイマイチな、洗練されてない印象を受ける出題もいくつか見受けられました。そういう問題は、当然出題意図が児童に伝わらず、せっかく理解しているのにそれ以前のところで引っかかることをうかがわせる正答率の低い問題も含まれ、モヤモヤしていました。また、理科の問題では理科をやってるんだか禅問答をやってるんだか分からないような意地悪な出題もありました。ただし、それはまだモヤモヤで済むレベルです。
しかしですよ、今年度の算数の問題をご覧ください。ツッコミどころ満載で、もはやモヤモヤを通り越して「不適切」「出題ミス」と言われても仕方ないレベルと考えます。いかがでしょうか。
第5学年では、比例かそうででないかを説明させる問題で、これは今年の全国学力テストの類題ですが、全国学力テストでは説明文を数字で穴埋めするだけだったので、県のテストでは全部説明させる分だけやや難しくなっています。それはそれとして、指導のポイントに「表の具体的な数値を示して,その関係を説明できるようにすることが大切」と書いているにもかかわらず、正答例の1番手に書かれているのが「おにぎりの個数が2倍,3倍になっても,それにともなって,代金は2倍,3倍になっていないから。」という「比例ではない」を言い換えただけにすぎず表の数値も使っていない文面が正解として挙がっているんです。これは明らかにおかしいです。正答例の2番手が妥当な答えです。
第4学年の折り紙を用いた問題は、二等辺三角形であることを説明する例が不完全と言わざるを得ません。「長方形の向かい合っている辺の長さが等しい」から「三角形には長さの等しい辺が2つあります」は飛躍があり説明として乱暴すぎませんか。「折り返すことで、長方形の向かい合う辺が移動して三角形の2つの辺となっているから、2つの辺の長さが等しい」とまで説明しないと、普通に授業で解説したとして児童が理解できないのではないでしょうか。この意味不明レベルの説明を参考にして正三角形の説明を求める出題になっているので、申し訳ないけど、出題の欠陥にお付き合いして、つまり一緒にボケて初めて正解にたどり着ける問題と言わざるを得ません。
ついでに言っておくと、ひろしさんの手順で、一番左の長方形の図→左から2番目にある半分に折った折り目のように見える図に、何の説明もありません。重なるように折ってから広げる絵がない以上、「半分に折ったかどうかはご想像にお任せします」ということになってしまいます。常識的に考えたら半分に折ったのでしょうが、真ん中付近で適当に点線を引いただけかもしれません。分析資料にする際に説明を省いただけだったらよいのですが。
これ、受検者の児童のほとんどは不適切さには気づかず、難しい問題と受け止めるだけだと思いますが、現場の先生は気づかないのでしょうか、おかしいという声は上がらないのでしょうか。入試問題であれば前提条件に疑義の生じる説明不足はご法度であり、宿題とかならまだしも、公式なテストではあってはまずいレベルだと思います。また、比例を言い換えただけの回答を正解として扱っているならば、"採点ミス"と言われて反論できるのでしょうか。学校関係者・塾関係者の方のご意見をお聞かせいただけるとありがたいです。
我が家では良い問題も悪い問題も共有していますが、上述した問題については、息子には「これらの問題は不適切な問題と分かったうえで割り切って回答する、問題の"裏の裏"を読む必要がある」と解説しています。また、県立中学入試の問題でもこれほどではないにしても同様の傾向がうかがえますので、私としては和歌山県に住み勝負する以上、この事象はリスクと考えています。
記述力をつけさせるための問題を出そうとはしているのは分かりますが、これでは空回りしているというか、出題者の力量が足りていないために最悪児童や先生にとり二次被害になるかもしれません。このようなくだらない出題をいくらやっても何にも得られるものがなく、先生方を責める材料に使っているんだったら救いようがない、ということです。全国学力テストでもしこのような問題が出されたら、早晩炎上案件になるのではないでしょうか。和歌山県の子どもの学力レベルを上げたいのであれば、出題者側が出題に改善の余地があると気づき、有識の先生が相互にレビューする体制を強化して適切な出題に改めることから始める必要があると思います。
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